親父に呼ばれて帰国したのは15歳の春だった。

IQの高さを評価してもらい小学生の頃から度々アメリカに呼ばれていたのだが、気がついたら中学を卒業する年齢で大学を卒業をしていた。
日本の学校ならこう順調には行かなかっただろう。

アメリカでの生活は悪くなかった。友達は居なかったがその分勉強や研究に集中することができた。能力があれば確実に認められ馬鹿な連中に合わせて授業の時間を無駄に潰す必要もなかった。友達なんて直ぐに妬んできたり裏切ったりする。そんな奴らと仲良くなって一体何の得になるのか分からなかった。

何処から情報が漏れたのかスピカグループの御曹司だとバレた時は鬱陶しいくらいに女がやってきた。どうしてもと言われるので顔の良い女と何人か付き合ってみたが、数日連絡しないと機嫌が悪くなったり、アレが欲しいコレが欲しいとねだられて無駄にデパートへ連れて行かれ面倒臭い生き物だと思った。だから日本に帰る事を理由に最後に付き合った女とも別れてきた。別れ際に泣かれたが面倒なだけで申し訳ないとか悲しいとかそんな気持ちは一切なかった。

日本に着くと空港からそのままスピカ本社に行き親父と会うことになっていた。大学を卒業してから半年、経営を任されていたアメリカの会社にいた無能な社員を大量に解雇したのが気に入らなかったのだろう。あんな奴ら雇っておく方がマイナスだ。なのに何故文句を言ってくるのか分からなかった。俺がCEOになってから売り上げはかなりの勢いで上がっている。実績は出しているのだ。

本社の社長室で待っていると親父が外出から戻ってきた。

「おお、晴翔、久しぶりだな。アメリカでの業績は聞いたぞ。よくやっているらしいじゃ無いか。」

「ああ。無駄は全て省いたからな。」

「お前が切り捨てたものは本当に無駄だったのだろうか?」

「俺の判断に間違いはない。無能な奴らが何人集まっても無能に過ぎない。」

「晴翔、無能な人間と決めつけて無能なままにしておく上司もまた無能であると言う事を覚えておきなさい。」

「はい。わかりました。」

「例えばなんだが…。あまりの貧しさに食べ物を盗んでしまった子どもを見つけたらお前ならどうする?」

「もちろん直ぐに警察へ連れて行き司法で罰して貰います。」

「それも間違いでは無いがなぁ…。お前は昔から情に欠けたところが目立つ。もっと人との繋がりを学ぶ必要がありそうだな。そうでないといつか恨みを買って刺されるぞ。」

「…はい。」

「そこでなんだが。4月から日本の高校へ通い友達を作って仲間との思い出を沢山作ってきなさい。」

「友達ですか?友達は俺には必要ない。アメリカでもいなくても問題なかった。」

「そんな事を言わずに、人が生きていくには仲間は必要だ。そこの学校はお前の幼馴染の柳の息子と綾小路の娘が通っている。助けになってもらえるだろう。」

「俺が助けることはあっても助けは不要だと思います。」

「本当にそうかな?3年間人間関係を学んでくるんだ。そうすれば分かるはずだ。」

「わかりました。」

親父の決定に了承し、社長室を出た。