「おーい、琴乃(ことの)。ちょっと、いーかー?」

夕食後、自宅の2階にある自分の部屋で夏休みの宿題をしているとお父さんが1階のリビングから大きな声で私を呼んだ。

 お父さんっていつもタイミングが悪い。せっかくいいテンポで問題が解けていたのにっ!

仕方なくノートを閉じ、一階にあるリビングへ空いたコップを持って降りた。

普段なら仕事で遅くなり私が寝るころに帰宅する父だが、今日はお盆休みなので朝から家にいる。

 休みならどこか旅行にでも連れて行ってくれればいいのに…。まぁ、夏休みの宿題が終わってないから強く言えないんだけど…。

いつもならキッチンで洗い物などパタパタと動き回っているお母さんも珍しくダイニングテーブルについていた。

空いたコップをキッチンの流しに置き、自分もダイニングセットの椅子に両親に向かい合う様に座った。

「…いったい、二人そろってどうしたの??」

両親が互いに目で合図を送りあい、お父さんが重い口を開く。

「琴乃…。突然のことで悪いんだが…。夏休みが終わったら全寮制のある学校に転校してもらうことになった。」

「えっ?どういう事??しかも全寮制って…。私、一生懸命勉強して今の高校に入ったんだよ!」