「センパイ、頭痛ぇの?」

「んー、ちょっとだけね」

「涙、もう乾いた?」

「やだなぁ、泣いてないよ」


頬に残った涙の痕にはわたしも気づいてはいたけれど、誤魔化して笑う。


いつもなら「誤魔化すな」と文句を言うはずのメグくんも、この時ばかりは何も言わずにそのまま優しくわたしの頭を撫でてくれた。




あぁ、不思議だな。


メグくんがいてくれたら、痛いはずのものが、全部吹っ飛んだような錯覚をする。


わたしがメグくんのためにそばにいるなんて綺麗事かもしれないね。


ただわたしが、君のそばにいたいだけなのかもしれない。



「……ふぜーあんりの香り」

「うん、フゼアアンバリーね」

「あぁ、それそれ」

「やっぱ適当すぎだよ、センパイ」


クスクスと笑えるようになったメグくんに心があったかくなりながら、わたしは帰りのバスに乗るまでの間、彼のそばで眠りについた。