「いいよ、上野さん。わたしひとりで十分だから」
上野さん、なんて呼び方にさえ変な感じがする。
必死で意識を集中させた。
……彼女の心の声は、絶対に聞きたくなんかない。
普段はする必要がないだけで、ひとりくらいなら頑張れば心の声なんて聞かないようにできる。
その分ちょっと頭が痛くなるけど、今はそんな心配してる場合じゃなかった。
「でも、」
「ねぇ、聞こえなかったの?それともあの時みたいになりたい?」
「……っ」
わたしの冷たい声とその言葉に、彼女の顔色が変わった。
……何よ。わたしのこと"知ってて"、のこのこ近づいてきたのはそっちでしょう。
自分から言ったくせに、わたしはそれ以上彼女の反応が見ていられなくなってそっぽを向いた。
何も言えなくなったらしい彼女は、そのまま踵を返した。
離れていく足音に、正直ホッとする。
……久しぶりに、目が合ったな。



