「───……あ、あの」
そろそろ水で流そうかなと思った頃、後ろからの気配と共に足音が聞こえた。
チラッとそちらを見た瞬間、動かしていた手がピタリと止まる。
────ドクン。
「ゆ、優ちゃん。手伝うよ……?」
「……っ」
遠慮がちなその声を聞くのはいつぶりだろう。
『近づかないで』
『気持ち悪い』
『怖い』
その瞬間、昔の嫌な記憶が蘇ってくる。
相変わらず華奢で、相変わらず三つ編みおさげの彼女のその姿に、懐かしいとさえ思ってしまった。
上野桜(うえのさくら)。わたしの、小学校の頃の同級生。
まぁ、それも昔の話だけれど。
まさかこんなところで話しかけられるなんて思わなかったから、正直驚きすぎて声も出なかった。
……あぁほら、そんなにビクビクしちゃって。
そっちから話しかけてきたくせに、怖がっているのがバレバレ。
わたしの方が泣きたくなっちゃうじゃないか。
気持ちを必死に抑え込んで、ニコリと笑顔を張り付けた。で、首を横に振った。
もう、声は出る。大丈夫。



