少し離れた支柱から覗き込んでいた女の影を見て、思わずクスリと笑った。
あー、バカバカしい。あんなのにいちいち構ってられないよ。
転がってしまったイヤホンを拾って、再び耳にはめようとした、その直前。
たくさんの雑音に混じって聞こえてきた声に、わたしは咄嗟に耳をすませた。
"あーあ。千堂のヤツ、マジでムカつく。一回絞めとかねぇとダメだな。"
低い男の声。
他の下校生徒に混じっていて、どこにいるのかわからない。
でも。
千堂って……、メグくんのことだよね、きっと。
不意に聞こえてきたまさかの人物名に、慌ててもう片方にはまっていたイヤホンも外した。
片耳でダメなら、両耳で────。



