特に笑ったことに意味はなかった。
けどわかりやすく面倒くさそうな顔をしていたのが可笑しくて、可愛くて、愛おしいと思ったから。
"……放課後、覚えてろよ。"
わたしにだけ聞こえるようにそう言ったメグくんは、名残惜しそうにまたわたしの髪を撫でる。
「じゃあまたね、センパイ」
それから立ち上がると、ヒラヒラと手を振りながら保健室を出て行った。
「……なんか、マジで千堂が千堂じゃないみたい」
「え?」
まだ保健室に残っていた菊島くんが、怠そうに出ていくメグくんの背中を見送ってそう言う。
「市原先輩に会う前は、なんつーか、取って付けたような表情しかしてなかった気がします」
「あー……、うん。それはなんかわかるかも」
だって最初は空っぽだったもんね、メグくん。
今思い出しても、あの時の彼は今とは全くの別人だ。



