「───……え?」



目の前のメグくんが、驚いたように声を上げた。



その瞬間にヒュッと吸った空気が冷たくなって、今自分が何を言ったのかを理解する。


ドクン、と心臓が嫌な音を立てた。


……今の、声は。



「センパイ、今……」

「えっ……あ、えと」



メグくんの声じゃない。


ううん。メグくんの声だけど、現実の声じゃない。



途端に頭が真っ白になって、パッと掴まれていた手を振りほどいてしまった。


数秒前まで温かかった指先がひんやりとした空気に触れる。



……ご、誤魔化さなきゃ。


咄嗟に思ったのは、それだった。




大丈夫、まだ大丈夫。



『怖すぎるよ』
『やだこっち見ないで。近寄らないで』


「……っ」


途端に昔のことを思い出して、言葉が詰まる。


……誤魔化すって、そんなのどうやって。