三人で彼のバイト先へ行くと店先には夕方の買い物客を見込んでか沢山の焼き魚が並んでいた。
店内を見るとショーケースにはお造りなどの生鮮魚も陳列されていた。
店の奥を見ると彼は何か作業に没頭していてこちらには気づかなかった。
他の店の人たちもまだ買い物客が来る時間ではないので店先に居る私たちに気づかないようだった。
理佐「どうしょう……」
由依「西野くん出て来なさそうだね」
美波「呼んじゃえばいいじゃん」
理佐「えー!そんなの無理だよぉー……」
美波「じゃああたしが呼んであげるよ!」
理佐「え…?」
と、私が返事するや否や美波が大きな声で彼のことを呼んだ。
美波「西野くーん!!!」
すると美波の大きな声に彼も含めて店の人たちも皆こちらを振り向いた。
そして彼が手を止めて店先に飛び出てきてくれた。
義雄「え?どうしたのみんなで?」
美波「うん、理佐が西野くんのバイト先のお魚が美味しそうだったって言うから♪」
由依「うん、で買いに来て今日は理佐の家でみんなで食べようって話になってね♪」
理佐「うん、そうなの…」
義雄「そうなんだ、ありがとう♪」
そして美波が陳列されている焼き魚を見て…
美波「へぇ~ホント美味しそう♪」
義雄「うん、ここのは美味しいよ♪」
由依「何がお薦め?」
義雄「今日はね、鰆が冷凍じゃなくて生のを焼いてるからいいって言ってたよ」
義雄「あと鱧も脂のってきてるから美味しいって言ってた」
理佐「へぇ~そうなんだ…」
美波「西野くん板に付いてるね♪」
義雄「あ、そぉ? うん、けっこう長くやってるからかな…?」
由依「ホント、何か高校生だとは思えなーい♪」
義雄「いや、そんなことはないけど……」
と、話をしていると店から店員さんが出てきて…
店員「よしおー!お前こんな可愛い子に囲まれて幸せそうだなー!」
義雄「えーー!?」
店員「で? どの子が彼女なんだ?」
義雄「え??」
由依「いゃぁ~あたしたちは……」
美波「いゃぁ~あたしたちは……」
と、二人が後ずさりをして私だけが取り残されるようになった。
理佐「え?ちょっとぉー……」
店員「へぇ~この子が彼女か!? この前も来てた子じゃん」
義雄「え!? だから違うってー!もぉー!」
義雄「早く仕事しないと夕方のお客さん来るよ!!」
と、彼がその店員さんを膝蹴りして奥に押し戻した。
店員「痛っ!痛っ! へいへい♪」
と、言ってその店員さんは戻って行った。
義雄「ごめんね、あの人おかしいんだよ!」
理佐「あ、うん…大丈夫」
美波「え? 西野くん理佐が彼女じゃ嫌?」
義雄「え?」
理佐「え?」
理佐「ちょっとぉー美波ー!!」
義雄「そんな、渡邉さんがオレの彼女なんてもったいないよ!」
義雄「それに渡邉さん好きな人いるって…」
美波「だからその好きな人ってのは…」
理佐「わーー!!!美波ーー!!!」
と、言って私は美波の口をふさいだ!!
義雄「え……?」
と、彼はキョトンとしていたが由依はその横で爆笑していた。
第四十四話へつづく…