時刻は夕方の6時半…
西陽が店内を眩しく照らし込んでいた。
まだ外は明るいものの店先の街灯は明かりを灯し始めていた。
理佐「もうそろそろ帰らないとね」
美波「わっ、ホントだ!陽が長いから時間の感覚がずれちゃうね」
義雄「今日はありがとう♪ なんとかいけそうな感じしてきたよ」
理佐「ホント?よかった♪」
そして食べ終わったトレーを彼がまとめて返却口へ持って行ってくれて三人で店を出た。
美波「あたしママに買い物頼まれてるからさ、よしおくん理佐送っていってあげてよ」
理佐「え……」
義雄「あ、うん……」
すると美波が彼に何やら耳打ちしていた…
美波「ドーナツのお礼だよ!上手くやれよぉー」
義雄「え………」
理佐「ちょっと美波、何ぃー?」
美波「うぅん『ごちそうさま』て言っただけだよ!じゃあねー」
と、美波は駆け出して行った。
理佐「うそっ!絶対うそだよぉー!」
理佐「ねぇ? 美波何て?」
と、私は彼に問い質した。
義雄「え……いや、ホントほんと……」
理佐「もぉー!何か余計なこと言ったんでしょ!?あの子……」
義雄「いや、ホントだって……」
理佐「もぉー!」
義雄「じゃあ帰ろっか? 後ろ乗る?」
理佐「え………」
と、彼の言葉に少し驚いたが私は素直に…
理佐「う、うん……じゃあ……」
と、言葉にしていた
義雄「カバン……カゴに入れとくよ」
と言って彼は私のカバンを手に取り、彼のカバンと一緒に前カゴに入れてくれた。
そして私は横座りで彼の自転車の後ろに乗った。
義雄「そんなんじゃ振り落とされるよ!しっかり掴まってなきゃ!」
と、彼が言うので私は彼のお腹に軽く手を回してしがみつくようにした。
義雄「じゃあ行くね」
と、彼は言い勢いよくペダルを漕ぎ始めた。
すると歩道の段差で私の体は大きく揺らされた。
理佐「キャッ!!」
と、私は思わず彼に強く抱きついてしまった。
義雄「あ、大丈夫? ごめん…」
理佐「うぅん…ちょっと揺らされただけ、大丈夫だよ」
と、私はそのまま彼の背中にしがみつき続けた。
彼の背中は少し汗の臭いがして男臭かった。
それと微かにタバコの臭いもまじっていた。
でも何だか心地よくて彼の背中に頬をつけていた。
理佐「西野くん……ありがとう……」
と、私は小さな声でつぶやいた……
義雄「え、何? 何か言った?」
と、彼は私に問いかけた。
理佐「うぅん、何でもなーい」
と、私は一際大きな声で彼に返事した。
義雄「祇園祭楽しみだねー♪」
理佐「うーん♪」
義雄「オレ、女の子と行くの初めてだよ!」
理佐「そうなのー?」
義雄「渡邉さんて浴衣とか着るのー?」
理佐「え? 浴衣ー?」
義雄「オレ、学校帰りに直接バイトに行くから制服だけど……女の子はみんな浴衣とか着るのかなー?て……」
理佐「え……うん、考えとくー」
義雄「あ、ごめーん…無理にとは言ってないからー!」
理佐「うん、わかったー」
そして会話が途切れ私は彼の背中にしがみつき、頬をつけ揺られていた。
第百七十六話へつづく…