そして彼たちが楽器を手に取りスタンバイをし始めた。
すると彼らの表情が引き締まり、先程までの穏やかな表情がガラリと変わった。
義雄「あ、みんなも参考に見といてね」
美波「わかった!」
ドラムのスティックのカウントの音が一瞬静まった教室に響いたかと思うと、
迫力のある音が一気に教室を包み込んだ。
理佐「わっ、さすが……一発で合っちゃうんだ……」
そしてイントロが終わっておぜちゃんのボーカルが入る!
尾関「冷たい泉に素足をひたして、見上げるスカイクレイパー~……♬♪♫」
理佐「おー!」
由依「おー!」
茜「おー!」
美波「おー!」
私たちは顔を見合わせておぜちゃんの声量の大きさに驚いた。
そして彼らの演奏も、
まるで本物を聞いてるみたいにすごく完成されたように聞こえる。
やっぱりすごいなぁ~
こんなにすぐに合っちゃうなんて普段どれだけ練習してるんだろ?
そして演奏が終わると近くで見ていた生徒たちからも拍手が起こった。
「尾関先輩すごーい」
と、声がして振り向くと一年の五人がいつの間にか見学していた。
そして大沼が尾関に駆け寄り、
大沼「先輩すごい声出ますねー、すごいですー♪」
と、目をキラキラさせていた。
義雄「おー、お前ら来てたの?」
増本「さっきの曲、次やるんですか?」
義雄「いや、さっきのはこっちの女の子バンドでやるやつね」
大沼「あ、そうなんですか?今度は尾関先輩がゲストで入るのかと……」
義雄「まだ次やる曲は決めてないよ」
義雄「で、そっちは誰が何やるか決めたの?」
大沼「まだ全然なんですー」
義雄「あ、そうなんだ……じゃあこっちの守屋はオレがギター教えてあげようか?」
麗奈「え……?」
大沼「ちょっと!何で麗奈なんですかー?」
義雄「いや、一番可愛いから……」
理佐「え………」
増本「ちょっと先輩っ!!それならあたしに教えて下さいよ!!」
義雄「えー、増本ぉ~……」
大沼「ひどぉーぃ……」
義雄「うそうそ、冗談だよ!教えてほしけりゃ誰でも教えるよ」
増本「ホントですか?」
義雄「おぅ……ただし本気でやるヤツだけな」
増本「わかりました!考えときます」
大沼「もうちょっと見ててもいいですか?」
義雄「おぅ、いいよ……でも今日は女の子バンドがメインだけどな」
増本「はい、そっちも参考になりますので見ていきます」
と、言ってまた一年の五人は廊下の窓越しのところへ移動した。
茜「ちょっと西野くん!!」
と、茜が彼に近寄っていった。
義雄「え、何……?」
茜「このスケベ!!」
と、茜が彼の膝小僧を蹴った。
義雄「痛てっ! 何だよ……」
茜「女なら誰でもいいの!!?」
義雄「いや、オレだって好きな子ぐらい……あっ…!」
美波「えっ!何なにー!何てー?」
と、今度は美波が彼に詰め寄っていった。
義雄「あ、いや……ちょっとオレ、トイレ行ってくらー!」
と、彼は走って出て行ってしまった……
美波「聞いた、理佐!今の」
理佐「え、あ……うん……」
美波「ついにしっぽを現したかぁ~?」
と、美波が不適な笑みを浮かべていた……
第百三十七話へつづく…