私は彼の言葉に驚いて思わず講堂を飛び出していた。



廊下を走り、階段を降りて渡り廊下まで夢中で走った!





「理佐ぁー!!」

と、私を呼ぶ声でふと我に返った。


理佐「え………?」


茜「理佐ぁー! ハァッハアッハァッハアッ……あんたこんなに足早かったっけ?」

理佐「あ、茜……ごめぇん」


茜「まったくあのバカ!!あんなタイミングで言わなくても……」

理佐「え、でもそんな意味じゃなかったのかも……」

茜「そんな意味じゃなかったらどんな意味なのよ!!?」

理佐「え、そのぉ……なんて言うか……」



「渡邉さーーん!!」


と、遠くで呼ぶ声がして二人で振り向くと…

彼がこちらへ向かって走ってきていた。



義雄「ごめん、オレ……なんか……」

茜「あんたねぇ!!あんなとこでいきなり告白なんてしなくても…!!」

義雄「いや、違うんだよ!」

茜「え!!?」

義雄「違うんだよ! オレ…なんか興奮してて……」

茜「何よ!!?」


義雄「いや、そのぉ……オレ『渡邉さんのキーボードが好きだ!』て言ったつもりだったんだけど……」

茜「はぁーー!!?」

義雄「ごめん、何かライブ終わったばっかで興奮してて……」

茜「何よそれ!!?」

義雄「ごめぇん……」





理佐「アハハッ、」

茜「理佐!!?」


理佐「アハハ……なんだ!可笑しぃ!!♪」

茜「えーー!!?」


義雄「ごめん、でも……渡邉さんのことは…」

茜「……ことは??」


義雄「あ、いや…ごめん、なんでもない!」




キーンコーンカーンコーン……


義雄「あ、やべっ!予鈴だ!!」

茜「うそ!戻らなきゃ!!」

理佐「え!?後片付けは?」



美波「理佐ぁー!!」

と、上の階の窓から美波とおぜちゃんが顔を覗かせて手を振っていた。


尾関「もう後片付け終わったよー!教室行こー!」

と、手招きしていた。



私たち三人、小走りで階段を登り始めた。



茜が前を走り、彼は私のスピードに合わせて私と並んで走っていた。

すると彼が小声で…


義雄「ごめんね、また今度ちゃんと♩」


と、言ってスピードを上げて茜も抜かして行った。


理佐「え!!?」


茜「ちょっと西野くんずるーい!!」

義雄「ごめーん、オレ次体育なんだー!着替えないとー!!」

と、言ってフルダッシュで行ってしまった…





「今度ちゃんと」て……


どう言う意味なんだろ……?







第百十九話へつづく…