そしてドラムスティックのカウントが始まりバラードの静かな曲が始まった。



上手く入れた!

割と落ち着いている。

指も滑らかに動いている。

鍵盤が軽い感じがする。

調子のいい証拠だ!


イントロが終わりボーカルが入ると単調な指運びになり余裕が出てきた。

ステージを見渡すと彼もこちらを見ていて目が合った。

ふとお互いに笑みがこぼれた。


そして演奏が進みいよいよキーボードソロだ!

二基のスポットライトが同時に私を照らした。

わっ!

熱い!!

ホント彼の言ってた通りだ!

でも今は演奏しなくちゃ!

と、集中していると意外と熱さも眩しさも気にならなくなっていた。


そして無事にソロを弾き終えると次は一気に激しくなって彼のギターソロへとバトンを渡した。




そして曲が終わった…





講堂内が静まり返っていた…




少しの静寂の後、


「やったぁー!」

と、MARRYメンバーの三人の大きな声と共に一気に拍手が沸き起こった。

それは今までのどのバンドのどの曲よりも大きな拍手だった。

「イェーイ!!ありがとーー!!!」

と、ボーカルの秋元くんもボルテージが上がりマイクを通してシャウトした!

そしてメンバーも全員が手を挙げて歓喜にあふれていた。



秋元「ゲストの渡邉さん、ありがとー!!」

と、秋元くんが言うともう一度スポットライトが私を照らした。

私は眩しかったけど両手を振りそのまま舞台袖へと下がった。


秋元「じゃぁラストもう1曲ーー!!」

と、言って最後の曲が始まった。





由依「理佐ぁー!よかったよー!」

と、由依が迎えてくれた。

理佐「わぁーん終わったよぉー」

と、私は目を潤ませて由依に抱きついた。

由依「うんうん、えらいよ理佐は!」

理佐「ふぇ~ん」

由依「何でこれだけのことが出来るのに『好き』て一言が言えないかなぁ~」

理佐「それは別つぅー」

由依「はいはい、とにかくよかったよ!すごいよあんたは♪」

理佐「ふぇ~ん、ありがとぉー」







そしてすべての演奏が終わり私はもう一度ステージへ呼ばれて出て行った。



秋元「それではこれで今回の昼コンはすべて終了です!」

と、秋元くんが言うと大きな拍手が起こった。


そして拍手が鳴りやむと、

秋元「軽音は部員大募集してますので、入部したいって人がいたらどの部員にでもいいので声かけてねー!待ってるからねー♪」

と、言うとまた大きな拍手が起こった。


そして全員で礼をしてステージは終わった。






後片付けが始まると彼がケーブルを巻きながら近付いてきて、

義雄「やったね、渡邉さん!大成功だよ!♪」

理佐「うん、失敗しなくてよかった!」

義雄「失敗どころか!あの拍手聞いたでしょ⁉最高だよ!」

理佐「うん、すごかった…」

義雄「あーホントメンバーに入ってもらいたいよー!」


と、彼が言うとステージの下から…

「ダメだって言ってるでしょ!」

と、茜・美波・おぜちゃんの三人が睨みを利かしていた。

義雄「わっ、やべっ!」

美波「理佐はあたしたちのもんだよー!」

と、言うと彼は…



義雄「あー、でもぉ……渡邉さん好きだー!!」




全員「えーーーー!!!!」







第百十七話へつづく…