キーンコーンカーンコーン……
ホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴った。
私はカバンを持って教室を飛び出した。
そして旧校舎と新校舎をつなぐ二階の渡り廊下へと急いだ。
徐々に教室から出てくる生徒の雑踏が響いてきた。
私は週に一度のこの時を楽しみにしていた。
由依「理佐、まだ帰らないのー?」
中学からの親友の由依だ。
理佐「うん、今日は…」
と、言いかけると…
由依「あー!今日は木曜日か。じゃあ先帰るね」
理佐「う、うん…また明日」
由依は手を振りながら新校舎の階段を降りていった。
「いちに、いちに…」
テニス部がアップのランニングを始めた。
渡り廊下の下を通りすぎる茜が私に気付いて立ち止まって手を振っている。
茜「今日も聞いて帰るのー?」
と、茜が私を見上げて大きな声で言ってきた。
理佐「しーっ!!」
と、私は人差し指をたてて茜に向かって言った。
茜「いつまでそうしてるのー?」
茜「早く言っちゃえばいいのにー!」
と、また茜が大きな声で言った。
理佐「もぉー、ダメー!!」
理佐「ほら、みんな行っちゃったよー」
と、言うと彼女は…
茜「あんたが言わないなら代わりにあたしが言っちゃうよー」
と、言いながら走り去った。
すると旧校舎の三階から軽音楽部のドラムの音が鳴り始めた。
続いてギターとベースの音も聞こえ始めた。
準備をし始めたようだ。
私の週に一度の楽しみと言うのはこの軽音楽部の練習を聞くこと。
お目当てはその中の一人なんだけど…
彼のギターを初めて聞いたのは選択科目でとっている音楽の授業。
彼のことを知ったのもそれが初めてだった。
彼とはクラス自体は違うが唯一この選択科目の音楽だけは同じ授業。
私も幼少の頃からピアノをやっていたので音楽を選択した。
最初の頃の授業で一人一人得意な楽器の演奏を披露するというのがあってその時に彼が弾くのを初めて見た。
エレキギターでジャンルはロックだったが私の知らない曲だった。
でもものすごく上手くて感動した。
その時はまだ「好き」というまでの感情はなかったけど…
第二話へつづく…