観葉植物に囲まれたガラスドームの温室。時を多く刻んだ、少し古めかしい蜂蜜色の机に並ぶ茶器――紅茶がなみなみと注がれたティーカップの水面は、淡い翡翠色。


爽やかな香りがする。


「……なんのお茶なんですか?」


「王都エルシオンから取り寄せた茶葉と、月時雨にしか咲かない花で淹れた。効能は疲労回復、魔力回復、笑顔の花」


そう教えてくれたのは、この温室で、たくさんの植物を育ててる月読くんだ。世間を騒がせているイケメン翠緑士である。“翠緑士”とは、植物の加護を受けた者――あらゆる知識と薬茶をつくりだせる存在。


今のところ月読くんしか知らないから、希少な存在なんだろう。


温室で気を失ってたわたしを拾い、あっという間に薬茶をつくったのだから驚きだ。



「……」

「い、いただきます」


無言のまま促され一口。また一口と、結局最後まで飲んでしまった。あまりの美味しさに、少女から美しい花が夜明けにほころぶ。


「とても華やかで、あまくて、ふわふわします……!」


「顔見ればわかる」 


「……!!」




月読くんの笑顔は極上だ――。