城に着いた頃には、空はすっかり暗くなっていた。途中で眠ってしまったため、どのぐらい時間が経ったのかは正確には分からない。


「こちらにどうぞ、姫様」


 わたし達が使ったのは、隠し通路のようだった。古びているし、かび臭い。我慢して歩いた先には小さな扉があった。身体を縮こまらせて潜り抜ける。


(ここは……?)


 扉の向こうも真っ暗だった。先導の騎士がゆっくりと何か大きなものを動かしている。隙間から段々と光が射し込んできて、ここが小さな部屋だということが分かった。どうやら本棚の裏に隠し通路が仕込まれていたらしい。


「姫様、申し訳ございませんが今夜はこちらでお休みください。明日、迎えのものが参ります。隠し通路は内側から鍵をかけていただければ使えませんので、どうぞご安心を」


 そう言って騎士は、恭しく頭を下げた。ベッドや寝間着、軽食等必要なものは見る限り全て揃っているらしい。


(王太子さまの葬儀に参列するだけだもんね)


 豪勢な部屋に通されなくて良かったと胸を撫でおろしつつ、わたしは小さく頷く。それからややして、騎士は元来た通路を戻っていった。