その翌日、わたしの元に大量の布と糸が送られてきた。
 滑らかなシルクに加え、麻や木綿でできた布が複数枚。色とりどりの色糸は、原色に近い色合いのものや光沢があるもの等、どれも鮮やかで美しい。
 肝心の送り主が誰かというと――――


『姫様からの贈り物、楽しみにしていますね
   ランハート』


 たった一言、そんな手紙が添えてあった。
 とはいえ、紙に焚き染められているのは中々に品のある香りだし、字も大胆ながら綺麗に書かれているのが分かる。手紙から受ける印象は決して悪くはない。


(多分だけど、ランハートはわたしと結構性格が似てるんだろうなぁ)


 シルクみたいな上等な布だけでなく、練習用の麻や木綿を送ってくるあたり、ランハートはわたしという人間を分かっている気がする。根が貧乏性と言うか、平民として育った性なのか、下手糞なうちはそれに見合った布を使っていたいと密かに願っていたのだ。

 それに、こんな風にハッキリと『贈れ』と言われてしまっては、さすがに無視をするわけにもいかない。彼は自分で『性格が悪い』って言ってたけど、個人的には性格が悪いというより、無駄が嫌いで、物凄く自分に正直なんだと思う。