「その通りだ。本人から聞いたのか?」

「……断片的に。『妃殿下から打診があった』って言ってたから、そういうことかなぁと思って」


 ゼルリダ様の立場を考えれば、継子のわたしより、己の甥っ子が王太子になった方が良いに決まっている。それなのに、土壇場でおじいちゃんが話を引っくり返したため、あんな風に憤っていたのだろう。


「変だと思ったの。おじいちゃんはわたしを葬儀に呼んだ張本人の筈なのに、わざわざ隠し通路を使わせて、人目に付かないような部屋を宛がってまで、わたしの存在を隠していたのだもの。
それなのに、葬儀の場ではまるで見せびらかすようにわたしを連れて歩くし、チグハグだなぁって。
葬儀の前にわたしが居ることがバレたらゼルリダ様と揉めるから、そうしたんでしょう?」

「――――ああ。ゼルリダはこれまでもずっと、お前の存在を認めようとしなかったからな」


 ポツリと呟くようにおじいちゃんは言う。
 前におじいちゃんが話していたこと――――『わたしを城に迎えられなかった』理由はきっと、ゼルリダ様が反対したからなのだろう。


「だからこそ私は、公の場であるクラウスの葬儀にライラを出席させることで、クラウスの子が――――正当な次期王位継承者が居ると世間に知らしめた。
こうなってはもう、ゼルリダにはどうすることもできない。ランハートを次期王太子にするという彼女の目論見は頓挫したことになる」


 おじいちゃんはそう言ってゆっくりと目を瞑る。疲れがたまっているのだろう。最後に会った日よりも、肌がくすんで見えた。