「――――ようやく来たか」


 開口一番、おじいちゃんはそんなことを言った。わたしは恭しく頭を下げつつ、おじいちゃんの表情を窺う。
 この数週間、おじいちゃんはわたしに会おうとはしなかった。だけど、わたしの方もおじいちゃんに会おうとはしなかったし、本当は、こうしてわたしの方から会いに来るのを待っていたんだと思う。


「おじいちゃんに聞きたいことがあるの」


 わたしはそう言って、ゆっくりと顔を上げた。
 人払いをした部屋には、おじいちゃんとわたしの二人きり。おじいちゃんは鋭く目を細めると、小さくため息を吐いた。


「ライラよ、そこに座りなさい」


 そう言っておじいちゃんは、ソファを指さす。言われた通りに腰掛けると、おじいちゃんもわたしの向かいの席に腰掛けた。


「それで? 何が聞きたい?」

「…………いくつかあるんだけど、まずは一番大事なことを。
おじいちゃんは本当に、わたしを王太女にするつもりなの?」


 尋ねながら、声が小刻みに震える。


「葬儀の時にゼルリダ様が言っていたこと――――『話が違う』っていうのは、ゼルリダ様はランハートを王太子に据えようと思っていたって意味だよね?」


 わたしの言葉におじいちゃんはほんの少しだけ目を見開くと、ややして口の端に笑みを浮かべた。