ついでに言うと今回、本当はわたしがシルビアの部屋に行くつもりだったのに、それすらも侍女達やアダルフォに止められてしまった。『自ら動いちゃいけない、相手を動かせ』っていうことらしい。


(本当はシルビアが仕事をしている部屋が見て見たかったんだけど)


 わたしの行動範囲は城内のほんの一部で、行ったことのない場所ばかりだもの。気分転換したかったけど、話自体が流れちゃ堪らないので、取り敢えず今回は諦めることにしたのだった。


「噂には聞いておりましたけど、本当にクラウス殿下にそっくりですのね」


 シルビアはそう言って、懐かし気に目を細める。どうやらわたしと王太子様を重ね合わせているらしい。


(それ、本当にしょっちゅう言われるのよね)


 葬儀の時だけのリップサービスかと思いきや、わたしと王太子様――――生物学上の父親は、本当にそっくりらしい。ありとあらゆる人から『似ている』と称されてきた。絵姿ぐらいは見たことが有るものの、穏やかで優し気な笑みを浮かべた王太子様がわたしに似ているのか、正直言って分からない。わたしの心根は決して穏やかではないし、彼みたいに整った顔立ちだとも思わないから。


「ありがとう。そう言って貰えて嬉しいわ」


 複雑な心境のままそう答えると、シルビアは優しく微笑む。それからそっと侍女に目配せをした。