「わたし、家に帰りたい」

「ならぬ。今日からここがお前の家――――帰る場所だ」


 おじいちゃん――――国王様はそう言ってまじまじとわたしを睨みつける。わたしも負けじと睨み返した。


「分かるだろう? クラウスが――――私の唯一の子が死んだのだ。もう誰も――――お前以外に王位を継げる人間が存在しない」

「そんなの……そんなの都合が良すぎます! だってわたし、十六年間ずっと平民として暮らしてきたんですよ⁉ それなのに、いきなり王位を継げなんて」


 つまりは『消去法で仕方なくわたしを迎え入れた』って言ってるのと同じことだ。そんな風に扱われて、素直に『はい、そうですか』と受け入れる人間はそういない。少なくともわたしは受け入れたくなかった。


「金銭的援助はきちんとしてきたよ。親族としての責任は果たしていたつもりだ」

「そういうことじゃありません!」