広間の中央にたどり着くと、わたしは人々の方を向いた。
 厳かな雰囲気の中、おじいちゃんはわたしが王太女となる旨を宣言し、聖職者が祝の言葉を述べる。

 聖女シルビアが新たな王太女の即位を祝福し、広間がキラキラと光り輝く。
 歓喜の歌声に、響き渡る祝砲。


 おじいちゃんからティアラを授けられ、わたしは参列者達へと向き直る。
 湧き上がる拍手と喝采。
 目を瞑れば、今この場には居ない、我が国に暮らす数千万人もの人々が目に浮かぶようだった。

 もう一度大きく息を吸い、前を見据える。そうしてわたしは、一人ひとりに向けて語り掛けた。


「つい数ヶ月前に知ったことなのですが――――実はわたし、お姫様でした」


 それは、姫君のスピーチにはふさわしくない出だし。
 けれど、物凄くわたしらしい。おじいちゃんやアダルフォ、ゼルリダ様すらも目元を和らげるのが目に入り、わたしはそっと微笑む。