「まさか、僕が浮気をすると思っていたんですか? 馬鹿ですね。僕にはライラ様がいるのに。他の女性を見たりしません」

「だけど……だけど! この間、部屋に他の女性を入れていたじゃない! わたし、アダルフォと一緒に見てたんだから。全然、わたし以外の女性を見てるじゃない…………っと」


 しまった! あの日のことは黙っておくつもりだったのに! 洗いざらい吐いた上、咎めるようなことまで言っちゃったし。


(ダメダメじゃない)


 一人打ちひしがれるわたしに、ランハートは目を丸くする。それから、口の端を綻ばせると、彼はわたしの頬を撫でた。


「僕の部屋に女性が出入りしているのを見て、嫌な気持ちになったんですか?」

「…………うん」


 そんなの、当たり前じゃない? 表情だけでそう伝えたら、ランハートは意地悪な笑みを浮かべる。


「あれは今日の衣装の仕立て屋です。せっかくのプロポーズですから。貴女の思い出に残るものにしたい。ドレスも宝石もこだわりたいと思ったんですよ」


 サラリと口にできるあたり、本当にそれ以外の女性の出入りがなかったのだろう。思い当たるフシが複数あれば、『どれを見られた?』ってなるはずだし。