一通り弔問客の相手を終えたらしく、おじいちゃんが宮殿へと帰っていく。


(良かった……これで家に帰れる)


 そんな風に思いながら、わたしはホッと胸を撫でおろした。
 おじいちゃんの隣を歩きながら、騎士のおじさん――――ランスロットを探してわたしはキョロキョロと視線を彷徨わせる。あの人がいないとわたしは城を出ることすらできない。家に帰るにも徒歩でどのぐらい掛かるか分からないし、王都なんて滅多に来ないから間違いなく迷子になってしまう。


「疲れただろう? 今、お茶を準備させよう」


 けれど、おじいちゃんはそんなことを言った。


「えっ……? えぇと…………」


 おじいちゃんは怒らせると怖い。断っちゃいけないと思いつつ『帰りたい』と意思表示するなら今じゃないか、なんて考える。


「国外から取り寄せた最高級の茶葉だよ。ケーキも既に数種類準備させている。パティシエがライラのために心を込めて作ったものだ。食べなければ罰が当たってしまう」


 そう言っておじいちゃんはゆっくりと目を細めた。


「……っ!」


 そんな風に言われたら、何も言い返せなくなってしまう。わたしは黙っておじいちゃんの後に続いた。