「準備は?」


 端的な質問に顔を上げる。
 おじいちゃんは食事を口に運びつつ、わたしのことを見つめていた。


「至って順調よ。文官達が頑張ってくれているもの」


 答えながら、わたしはそっと視線を逸らす。

 家出以降、おじいちゃんはわたしとの約束を律儀に守り、一緒に食事をする時間を作ってくれている。
 元々食が細く、忙しさにかまけて簡単に食べられるもので済ませていたらしく、わたしと食事をすることは、おじいちゃんの側近たちに随分と喜ばれた。

 おじいちゃんにはあと二十年ぐらい、国王として元気に生きてもらいたいところ。健康第一。身体を大切にしてほしい。


「そちらの方はあまり心配していない。
ランハートとはうまく行っているのか?」


 その瞬間、ドキッと大きく心臓が跳ねた。


「……どうしてそう思うの?」

「お前の顔を見ていればわかる。表情に迷いが見えるからな」


 鋭い眼差しで射抜かれて、わたしは思わず口を噤む。


「そんなこと言って、本当はアダルフォから聞いたんじゃないの?」

「……お前も大分知恵がついたな」

「やっぱり。そんなことだと思った」


 アダルフォに命じたのは、ランハート本人に追及をするなっていうことだけ。
 おじいちゃんに報告するなとは言っていないんだもの。


「婚約を考え直すべきだと言われた。お前自身はどう思う?」


 おじいちゃんはこれまた端的に問う。わたしは思わず眉間にシワを寄せた。