「ご婦人方とやり合ったそうですね?」


 ゼルリダ様のお茶会の翌日、わたしは私室を訪れたランハートと向かい合って座っていた。


「さすが、耳が早いわね」

「当然です。情報は鮮度が命ですから。出来る限りたくさんの話を集めるようにしていますよ」


 ランハートはそう言ってニコリと微笑む。わたしは思わず唇を尖らせた。


「で、情報源は? まさか、わたしの侍女達を買収したんじゃないでしょうね?」

「まさか。さすがの僕も、そんな大それたことはしませんよ」

「じゃあ、誰を買収したの?」

「単に参加者の一人が知人だったというだけですよ」


 ふぅん、と相槌を打ちつつ、なんだか釈然としない。そんなわたしの様子に、ランハートはそっと首を傾げた。


「僕の交友関係が気になります?」

「別に? 噂がどういった経路で拡がるか、気になるだけよ」


 そう――――本当に、ただそれだけ。
 だって、わたしの言動がどこでどんな影響を与えるか、きちんと確認しておきたいじゃない。情報源が身内なら、何処に居ても気が抜けないってことになるし。


「ご安心ください。今回の噂は拡がっても構わないものです。ライラ様がただの姫君ではないという、良い牽制になるでしょう。
それに、いざといった時の情報操作は得意ですから」

「情報操作、ね」


 嘘が誠になり、誠が嘘になる――――狭い貴族社会、情報を制する者が全てを制するといっても過言じゃない。そういう意味で言えば、ランハート程王配に向いている男性は居ないと思う。