「遠い昔に先代の陛下が授けた土地だと聞いているけれど、貴女にとっては何の価値も無いようだし、勿体ないじゃない?」

「それは……! それだけはどうかご勘弁を」

「え? だけど先程、より良い領地を求めるのは当然って言っていたし、何なら交換したいとまで言っていたでしょう? だけど残念。無い物ねだりするような貴族に相応しい土地なんて、わたしには思い浮かばないから、交換じゃなくて貰い受けることになってしまうけれど……」

「申し訳ございません、姫様――――いえ、殿下! 戯れが過ぎました。本当に、反省しております」

「そう、良かった。じゃあ、この話はお終いね」


 ニコリと無邪気に微笑めば、夫人は生気を抜かれたかの如く天を仰ぐ。こんな小娘が――――そう言いたい所だろうけど、わたしはこれでも未来の王太女。若かろうが女だろうが、王位を継ぐものなんだって覚えてもらわないとね。


「余計なことを」


 わたしだけに聞こえるような小声。ふと隣を見れば、ゼルリダ様が呆れたように眉根を寄せている。
 だけど、その表情はやっぱり優しい。厳しさの中に温かさが見え隠れしていて、何だか嬉しくなってくる。


 このお茶会が終わったら、ゼルリダ様と話をしよう。
 わたしは密かにそう決心するのだった。