ゆっくりと立ち上がり、夫人の前まで歩を進める。ヒュッと息を呑む音が聞こえたところで、わたしはそっと首を傾げた。


「ねえ、夫人にとってはわたし自身の言葉よりも、新聞や雑誌、噂話の方が重たいの? 貴女にとってわたしは、そんなにも軽い存在なのかしら?」

「い、いいえ、姫様……そんなつもりでは!」

「それにね。今さら父にわたし以外の子が出来なかったことを嘆かれるだなんて……まるでわたしは要らない子だと言われているみたい。何だかとても残念だわ」

「ちがっ! 滅相もございません」


 何が滅相もございません、よ。さっきまで明らかにわたしのことを侮っていたじゃない。
 平民上がりの形だけの王太女。公務や政治は配偶者に任せるに違いないって思っていたんでしょうけど、おあいにく様。そんな風になるつもりはないんだから。


「ああ、そうそう。貴女は今の領地じゃ満足できないのでしょう? だったら、もう必要ないわよね?」

「……え?」


 夫人は呆然と口を開き、わたしのことを見上げている。