(わたしに対する印象は――――どうやら悪くないみたい)


 ぽっと出の姫君に対し貴族達がどんな風に感じているのかは、即位に当たっての大きな懸念事項だった。だけど、世論がわたしに味方していることもあってか、悪いわけではないらしい。

 参加者たちが微笑みを浮かべ、順番にわたしへと挨拶する。
 資料に描かれていた肖像画と、本人とを頭の中で見比べながら、実際に受けた印象を頭の中に書き加えていく。

 ランハート主催の夜会で会った貴族達は、皆年若く、素直な印象だった。
 だけど、ここに居るのはわたしよりも一回り以上年上。しかも、王太子妃主催のお茶会に呼ばれるぐらいだから、色んな局面を乗り切ってきた強者ばかり。一癖も二癖もあるに違いない。
 笑顔の裏に、色んな思惑、感情を隠している――――そう考えるべきだ。

 本当ならば、同年代の貴族の令嬢たちと、ゆっくりと社交を学んでいけば良いのだろう。腹の探り合いだって、経験を重ねる間に上手くなるんだと思う。

 だけど、わたしは王太女になるんだもの。背伸びをして、荒れた戦場を一足先に見るべきだ。
 参加者たちが会話を始める様子を、わたしは密かに見守った。