「御機嫌よう、皆さま」


 ゼルリダ様が言う。普段よりも少しだけトーンの高い、朗らかな声音だ。


「こうしてまた皆さまにお会い出来たことを、嬉しく思っております」


 表情はというと――――うん、いつものゼルリダ様だ。全く笑っていないわけじゃないけど、ちゃんと原形を留めている。別人みたいに変わっていなくて良かった。


「お礼を申し上げるのは私共の方ですわ、妃殿下。変わらず仲良くしていただけて、嬉しゅうございます」


 最初に声を上げたのは、派手な装いのご婦人だった。所謂新興貴族と言う奴で、現状国政に大きく携わっているわけではない。だけど、夫婦ともに野心家で、王族に取り入ろうと躍起になっている。資産家で経済基盤も安定しているし、『使えそうなら将来的に登用もあり得る』っておじいちゃんが考えている貴族だ。彼女を呼んでいるのは、恐らくはおじいちゃんの意向だろう。


「ええ、本当に。こうしてまたお会い出来て嬉しく思いますわ。
今日は姫様もご一緒なのね。主人から聞いていたけれど、本当に可憐で愛らしい姫君だこと。クラウス殿下にそっくりね」


 そう口にしたのは、一番年配の上品な貴婦人だった。おじいちゃんの側近の奥方様で、お堅い見た目通り、保守的な人。新しいことを始めるのや、新興貴族を迎え入れるのに慎重な姿勢を取っている。参加者が偏っていると釣り合いが取れないので、こういう人も呼んでいるんだと思う。


「皆さま、お初にお目にかかります。ライラと申します」


 自己紹介をしつつ、全員の顔をゆっくりと見遣る。