「自分の部屋に戻りなさい」

「お断りします。今回の件は、おじいちゃんも『是非に』と言っていたし、わたしにも息抜きは必要だと思うので」

「……言っておくけど、私の茶会があなたの息抜きになることは無いわよ」

(でしょうね……)


 口にはとても出せないけど、そんなことは百も承知だ。

 わたしは今日、ゼルリダ様主催のお茶会に出席することになっている。
 お父さんは既に亡くなっていても、ゼルリダ様の王太子妃としての役職が無くなったわけじゃない。妃として、社交や情報収集に励むのは当然のこと。そんなわけで、お父さん亡き後も、定期的にお茶会を主催しているらしい。

 本来、わたしは王女だから、ゼルリダ様のように社交を一番に考え、学ぶべき立場だと言える。
 だけど悲しきかな、わたし以外の直系王族が居ない以上、王太女として公務を担うことが一番。王女としての役割は二の次三の次になっている。

 それでも、ゼルリダ様に全てをお任せしっぱなしで良い筈がない。
 だからこうして時間を作り、お茶会に参加させてもらうことにしたわけだ。



「ゼルリダ様のことですから、とっても美味しい茶葉を用意していらっしゃるんでしょうね。わたしは未だにそういうことに疎いから、楽しみだなぁ」

「……」

「お茶菓子も美味しいんでしょうね。うちのパティシエは皆腕が良いですもん」

「……」


 残念ながら、今は会話をする気分じゃないらしい。それでも、最初に比べたら空気が幾分和らいでいるし、個人的には何も憂いはない。