三日と開けずわたしに会いに来ていたバルデマーだけど、ここ一週間は音沙汰がない。かなり厳しいことを言ったし、本人も王配に指名されるのは無理だと悟ったのだと思う。
 気になるけど、わたしの方から連絡を取るのも気が引けるから、ロナルドに様子を聞いている。彼はこの間まで、バルデマーの直属の上司だったので、様子を窺いやすいのだ。


「殿下がお気になさることはございません。彼を選ばなかったこと、相応の理由がおありなのでしょう?」

「ええ」


 だけど、ちゃんと理由は有ったとしても、感情は完全にはリンクしない。バルデマーのことは嫌いじゃないし、最初は寧ろ好きだった。彼にときめいたことは一度や二度じゃないもの。


「殿下。どうかお気に止まないでください。ここで立ち直れないなら、それこそ、あいつはそれまでの男だったということです」


 穏やかな表情。けれど、吐かれた言葉はかなり残酷だ。
 これぞ行政人。王族の側近に選ばれるだけのことはある。


「そうね……ありがとう」


 依然色濃く残っているバルデマーに対する罪悪感。完全に消えることは無いだろうけど、ほんの少しだけ救われたような気がしてくる。


(さて、わたしはわたしのやるべきことをしなきゃ、ね)


 気合を入れなおして、わたしは膨大な資料の山と再び向き合うのだった。