(さてと。お父さんとお母さんのためにも頑張らないとね)


 二人が教えてくれたことを無駄にするわけにはいかない。
 わたしは改めてバルデマーに向き直った。


「実はね、公務デビューをしたら、王族に付けられている予算を幾らか削ろうと思っているの」

「予算を削る!? 王族のですか!?」


 余程ビックリしたのだろう。バルデマーは目を見開き、口元を押さえている。


「まさか、そのようなことを陛下がお許しになるとは……」

「大丈夫。陛下にもちゃんと相談済みよ。
もちろん、国の威信に関わるから、極端に減らすことはできないけれど、無駄があることは間違いないし、検討して良いって言ってくれたわ。
実際の予算の内容や積算については、わたしよりも文官たちの方が詳しいだろうし、話し合いながら進めていくつもりだけど」


 元々、今の何千分の一のお金で生活していたのだもの。削れる部分は幾らでもある。
 賛同が得られるかどうかは置いておいて、ゆくゆくは貴族達に割り振られた予算なんかも見直したいなぁって。


「しかし――――」

「バルデマー」


 名前を呼ぶと、彼はビクリと身を強張らせる。


「これがわたし(ルビ)のやりたいことなの」


 ゆっくりと刻み込むように言葉にする。

 わたしはお飾りの王様になるつもりはない。
 バルデマーが人の上に立つための駒になるつもりもない。

 王族として、きちんと自分の頭で考えて、自分の足で歩んでいく。そのことを明白にするべきだと思ったのだ。


「しかし、姫様」

「バルデマー、何か勘違いしていない? あなたは『王配』にはなれても『王様』にはなれないのよ?」


 自分でも厳しいことを言っている自覚はある。だけど言わなければ伝わらない。


「申し訳――――ございません」


 バルデマーは悔し気に眉を寄せ、ゆっくりと静かに頭を下げる。縋る様に手を握られるのを、凪いだ心で受け止める。


「うん」


 わたしは姫君。未来の王様。
 自分がおじいちゃんの血を継いでいるんだってことを、少しずつ実感し始めていた。