「俺は騎士です。ライラ様の盾となり矛となり、貴方と、貴方の進む道をお守りすることが俺の使命だと思っています。
けれど、ライラ様の夫となる人には、貴方の隣を歩き、支えていただきたい。ライラ様が自分らしく居られる場所――――甘えられる人が必要だと思っています。
その役割は俺には出来ません。俺はライラ様の隣を歩くことは出来ないのです」

「アダルフォ……」


 アダルフォのバカ。そんな風に言われたら、何だか泣けてきちゃうじゃない。
 彼は王配になる気概が無い訳じゃない。何が一番わたしのためになるのか考えて、敢えてそちらの道を選んだんだ。


「貴方の行く手を阻むものは、俺が全て排除します。必ずや、生涯を掛けてライラ様をお守りします。
ですから、ライラ様は心のままに進んでください。
それこそが、俺の願いなのですから」


 こんなの、とてもじゃないけど堪えきれない。ポロポロと涙を流すわたしを宥めながら、アダルフォは至極穏やかに微笑んだ。


「もちろん、ライラ様を悲しませるものは何人たりとも許しません。何かあれば即座に切り捨てます。それがたとえ貴方の夫となる人であっても」


 アダルフォはそう言って、鋭い視線をランハートに向ける。
 ランハートはほんのり目を見開き、それからそっと和らげる。


「肝に銘じておくよ」


 そう言って、二人は静かに拳を重ねる。
 アダルフォもランハートも、全く違うタイプの男性なのに、何だか長い道程を共にしてきた盟友みたいに見えた。


(わたし、まだ誰を選んだか伝えてないんだけどなぁ)


 そう思いつつも、心の中がポカポカと温かい。
 とてもじゃないけど、水を差す気にはなれなかった。