「彼にも困ったものですね。ライラ様にまであんな態度を取るだなんて。相当焦っているらしい」


 呆れ顔のランハートが小さくため息を吐く。


(そんなこと、わたしが一番そう思っているわ)


 仮にもわたしは一国の王女。
 あれを醜態って呼ぶのが正しいかは分からないけど、もう少し弁えていただいて然るべきだと思う。
 もちろん、平民出身で威厳の足りないわたしの方にも問題はあるのだけれど。


「最初はあんな感じじゃなかったのよ? 紳士で優しくて。わたしのことをちゃんとお姫様扱いしてくれたし」


 フォローをしてあげなきゃいけない気がしてそう口にすれば、ランハートは小さく笑った。


「そうでしょうね。僕もそういう認識でしたよ。
まあ、何か彼をあそこまで王配の地位に駆りたてる理由があるんだと思います。熱意というのは、持とうと思って持てるものじゃありませんからね。それについては素直に感心しますよ」


 エリーが運んでくれたお茶を飲みながら、ランハートはどこか遠い目をする。


「……そうだねぇ。ランハートじゃ一生掛かっても手にいれられなさそうだもんね」


 うん、激しく同意。
 もしも今後、ランハートがなりふり構わず何かに取り組む場面が有ったら、わたしはきっと涙を流して感動するだろうなぁ。アダルフォがさり気なく同意しているのが可笑しくて、わたしはついつい声を上げて笑ってしまった。