それはわたしにとって、あまりにも思いがけない言葉だった。
 だって、相手はおじいちゃんよ? 『まだまだだな』とか、『不安だ』とか、そういうことを言われるとばかり思っていたのに、唐突に褒めるんだもの。
 結局感情が全部表に出ている。頬が真っ赤に染まってしまった。


「短期間で良くここまで成長した。ライラなら大丈夫。おまえが公務デビューする日が待ち遠しいよ」


 それなのに、おじいちゃんはそう言って、わたしの頭を優しく撫でる。


(どうしよう……すごく嬉しい)


 反発もしたけれど、おじいちゃんのことはとても尊敬している。だって、わたしがこれまで何の憂いもなく育ってくれたのは、おじいちゃんやお父さんが、この国をしっかり護ってくれていたからだもの。


「ありがとう、おじいちゃん。わたし、頑張る」


 誇らしさを胸に微笑めば、おじいちゃんはびっくりするぐらい優しい顔で微笑んだ。


「とはいえライラよ。本人達に対しては、遠回しに結果を伝えることもやぶさかではない。期待を持たせすぎるのも酷だからな。そうして少しずつ、周囲に暗黙の了解を形成していくことも、人事の手法の一つだ」

「……って、簡単に言うけど、そっちの方がよっぽど難しいんじゃないの?」


 わたしの言葉に、おじいちゃんはクックッと喉を鳴らして笑った。


「御明察。だが、王太女としての必須スキルでもある。今回のことは良い練習の機会だと捉えたら良い」

(そうだけど。そうなんだろうけど!)


 これまでとは違った壁に直面したわたしは、心の中で小さくため息を吐くのだった。