それは、雪のチラつき始めた年の瀬のこと。まだ38歳という若さで、我が国の王太子殿下がお亡くなりになった。


「――――見て、エメット。物凄い数の献花だねぇ」


 広場に設置された献花台には物凄い数の花が捧げられている。今こうしている間も、哀しみに泣きぬれた国民が何人も訪れ、亡くなった王太子に向けて祈りを捧げていた。どうやら、彼は国民に愛される王子だったらしい。何の縁もゆかりもない人だけど、そういうのを見てるとこちらまで心が揺さぶられてしまう。ついつい目頭が熱くしていると、幼馴染のエメットが小さな唸り声を上げた。


「うーーん、でもさ……これからどうするんだろうな?」

「どうって?」

「だってさ、王太子様には子どもが居ないって話しだろ? ご兄弟もいらっしゃらないし、跡継ぎが居ないじゃん」

「あっ……そっか! 確かにそうだねぇ」


 答えながら、わたしは目を丸くする。