「愛国心が強いし、指導力もあって良いと思うんだけどね。バルデマーやランハートみたいに『候補者にして』って言われたわけじゃないし。そもそも、気持ちは打ち明けられたけど、わたしとどうこうなりたいみたいな話は無かったし」

「そうですわね。そういう意味で言えば、意思のハッキリしている他のお二方の方が良いような気がいたします。バルデマー様は物腰柔らかく、姫様を大事にしてくれそうですし、やる気に満ち溢れていらっしゃいますから」

「そうだねぇ……」


 だけど、最近思う。『大事にする』ってどういうことなんだろう?って。

 バルデマーの『大事にする』はきっと、わたしをお姫様として丁重に扱う事だと思う。出来る限り矢面に立たせず、代わりに自分が何でもする――――謂わばわたしはお飾りの王族。彼が前に立つために必要なコマなんだろうなぁって。

 対するアダルフォの『大事にする』は、わたしを主人として敬い、願いを叶えることだと思う。護衛騎士だから仕方ないけど、わたし達の間には明確な主従関係が存在する。一人の女の子として、というよりも『主人』としてのわたしが先行してしまうんだろうなぁって。


 エリーの淹れてくれたお茶を飲みながら、わたしはふぅと小さくため息を吐く。シルビアは穏やかに微笑みながら窓の外をそっと眺めた。