「そんな途方もない目標、一人ではとても抱えきれません。お付き合いしますよ。あなたが背負った重荷は、僕が半分持ちます。他の人のために頑張った分だけ、ライラ様は僕に甘えたら良い。あなたがやりたいというなら、僕はそれを応援します」


 ランハートらしくない真摯な表情。
 絶対、反対されると思っていたのに。どうしよう。
 すごく嬉しい。


「そ……それって、王配になりたいがためのリップサービス?」


 喜んでいるのを知られたくなくて、ついつい憎まれ口を叩いてしまう。


「まさか。あなたの夫に選ばれなかったとしても、僕がすることは変わりません。
意地っ張りで甘え下手なあなたが気を許せるのなんて、腹黒な僕ぐらいでしょう?」

「それは、その…………」

「もちろん、あなたに選んでいただきたいと思っていますが」


 心臓が跳ねる。恐る恐るランハートを見れば、彼は見たことがないような熱い眼差しでわたしのことを見つめていた。


「もしかして、おじいちゃんに言われたの? わたしにプロポーズしろって」


 わたしに選んで欲しいだなんて――――そんなこと、ランハートが自ら言うなんて変だもの。絶対、おじいちゃんの差し金に違いない。
 おどけるように口にすれば、ランハートはキョトンと目を丸くした。


「……プロポーズ? 違いますよ。僕はこんなついでみたいな形で求婚なんてしません」


 触れ合った指先が熱い。ドキドキして、息苦しさに喉が鳴る。


「待っていてください。然るべき時が来たら、ライラ様の心に残るような求婚をさせていただきますから」


 意地悪な、けれど優しい表情。
 頷くことも、首を横に振ることも出来ないまま。わたしはランハートのことを見つめていた。