「そうですね。本当にありがとうございます」

「人の話を聞いていたの? 勘違いしないでと言ったでしょう。
……本当ならば、ドレスもジュエリーも貴方自身が選ばなければならないのよ? 全く。ランハートが後継者ならば、こんなことにはならないのに。無駄に仕事が増えて、面倒なこと」


 不機嫌なしかめ面。
 侍女達は震えあがっているけれど、わたしは違う。一歩前に進み出て、小さく首を傾げた。


「そうですね。わたしもそう思います。
思うので……早く立派な王太女になれるよう、ゼルリダ様からも色々と教えていただけませんか?」


 こんなことをお願いするなんて、少し前まで考えられなかった。
 だけど、わたしはもっとゼルリダ様のことを知りたい。完全に仲良くなれなくても、歩み寄れたら良いなぁなんて思う。


「――――あなたが失敗して、迷惑を掛けられるよりはマシかもしれないわね」


 そう言ってゼルリダ様は踵を返す。
 彼女の背中を見送りながら、わたしは密かにガッツポーズを取るのだった。