「ええ。ティアラも含め、ゼルリダ様は細部にまで拘ってオーダーしていらっしゃいました。何度も何度もデザインを練り直し、ようやく出来上がったのがこちらのドレスです。
それから、こちらのネックレスはクラウス殿下からゼルリダ様に贈られたものをリメイクしております。様々な公務でお召しになっていたとても大事なジュエリーですから、私どもも気合を入れてリメイクさせていただきました」


 仕立屋の女性がそう言って嬉しそうに微笑む。
 件のネックレスには、中央に深い青色の宝石が鎮座していて、上品で美しいゼルリダ様にピッタリのジュエリーだ。
 一応わたしは宝石商の娘だし、モノの良し悪しぐらいは分かるつもり。これ、めちゃくちゃ高価で貴重な逸品だ。
 果たして、そんな大事なものを、わたしが着けて良いのだろうか。


「そう……ゼルリダ様がわたしのために――――」

「勘違いしないで頂戴」


 背後から聞こえてきた冷ややかな声音に目を瞠る。
 ゼルリダ様だ。
 侍女や職人たちが一斉に頭を下げる中、ゼルリダ様は部屋の中央、わたしの元へとやって来る。


「私は王太子妃としての責務を果たしたに過ぎません。第一、あなたのために装身具を一新するなんて、勿体ないでしょう? けれど、みっともない恰好をさせては王家の恥。ですから私は、仕方なく、自分の宝飾品をあなたに下げ渡すことにしたのです」


 氷のような冷たい表情。
 けれど、何故だろう。前みたいに怖いとは思わない。