「――――――話が違いますわ、お義父様」


 女性は真っ直ぐに前を見据えたまま、冷たくそう言い放った。あまりの冷たさに、身体がブルりと大きく震える。


(それにしてもお義父様って……)


 国王様に王太子様以外の子は存在しない。そこから導き出すに、どうやらこの女性が王太子様の妃であるゼルリダ様らしい。


「控えなさい、ゼルリダ。これは私が下した決定だ」


 そう言って国王様はゼルリダ様に負けないぐらい、冷ややかな声を発した。思わずゾゾゾッと全身の毛がよだつ。


(怖い……王族って怖い!)


 さっきまであんなに笑顔で柔和な雰囲気を醸し出していたのに、今の国王様はまるで百戦錬磨の戦鬼のようだった。わたしなんて本当に一瞬で息の音を止められてしまうに違いない。


(絶対に国王様には逆らわないでおこう)


 人知れず、わたしはそんなことを決意する。


(それにしても)


 そんな国王様と互角に張り合っているゼルリダ様はかなり凄い。元々は一貴族の令嬢だろうに、彼女からは王族としての誇りと気概を感じる。多分だけど、そういう人じゃないとお妃様にはなれないんだろう。


(本当に、すごい世界だなぁ)


 自分の居た世界とのギャップをつくづく思い知って、わたしはため息を吐いた。