王宮に戻って数日。
 約束通り、わたしはおじいちゃんと食事を共にしている。
 今夜はランスロットが付いているからと、アダルフォには席を外してもらった。彼にも関わりのある話をおじいちゃんとしたかったからだ。


「おじいちゃんに聞きたいことがあるの」

「何だい、ライラ」


 取り留めのない話をそこそこに、数日間温めてきた話題を切り出す。


「婚約者選びのこと。おじいちゃんとお父さんは、どうやってお妃様を選んだの?」


 尋ねれば、おじいちゃんは目を丸くし、やがて穏やかな笑みを湛える。


「私の妃――――ライラの祖母は、幼い頃に父が決めた許嫁だった。私とは違い、どこかおっとりとした上品な女性でね。クラウスの穏やかな気性は、あれの性格を強く受け継いでいるんだ」


 どこか懐かしそうに語るおじいちゃんは、いつもと雰囲気が全く違っていた。嬉しそうな、寂しそうな表情を浮かべている。


「公爵家の御令嬢でね。王太子妃になるために、幼い頃から王宮で教育を施されていた。だから、彼女に妃としての素質があったのか、正直私には分からない。
けれど彼女は、素晴らしい女性で、妃で、母だった。私は彼女を妻にできて、心から幸せだったと思っている」

「おじいちゃん……」


 正直、おじいちゃんがそんなことを言うなんて思ってもみなかった。王族は国を動かす駒であって、感情は二の次三の次。完全な政略結婚をしたのだとばかり思っていたのに。