初めて会った日から、アダルフォはわたしを護ってくれている。
 シルビアに引き合わせてくれたのは彼だし、おじいちゃんに反発して城から抜け出した時だってそう。馬車を手配してくれたし、ずっとわたしの側に居てくれた。


「アダルフォもわたしの婚約者候補に――――おじいちゃんのお眼鏡に叶っているのかしら?」


 ずっと気になりつつ、誰にも打ち明けられなかった疑問を呈してみる。
 アダルフォは辺境伯の弟だし、身分や教養の面で、ランハートやバルデマーに全く引けを取らない。その上、あの二人にはない強さと面倒見の良さ、指導者としてのスキルを併せ持っているんだもの。


「もちろん。だからこそ、陛下はアダルフォを姫様の護衛に付けたのだと思っております。問題は、アダルフォ自身に『王配になりたい』という意志が無いことでしょうが」

「……そうね。わたしも同意見」


 バルデマーやランハートと違って、アダルフォにはそういった野心が一切ない。
 彼はただ純粋に、わたしを護ろうとしてくれているんだと思う。


(王配選びって難しいのね)


 何が正解なのか、ちっとも分からない。活き活きと剣を振るうアダルフォを見ながら、わたしは小さくため息を吐いた。