「これでも未来の王太女ですからね。配偶者選びは真剣にしなきゃでしょう? 国の未来が掛かってるんだもの」


 言えば、ランハートはニコリと微笑み、わたしの向かい側のソファに腰掛ける。


「『城には戻らない』って仰っていた、あのライラ様がねぇ」

「いけない? そんなに王太子になりたかった?」

「いいえ。そんなこと、露ほども思っていませんよ」


 意地の悪い笑みを浮かべつつ、ランハートはエリーが淹れてくれたお茶に口を付ける。

 ランハートはわたしに『城に戻らなくて良い』と言ってくれた、数少ない一人だ。『わたしはもう姫様じゃない』って言ったら、名前で呼ぶ様に変えてくれたし、変に持ち上げたり、お姫様扱いなんてしない。

 その癖『別に王太子になりたい訳じゃない』なんて言うものだから、彼が何をしたいのか、考えているのかイマイチ分からない。


(分からないといえば)


 ランハートについて知りたいことは他にもある。
 意を決して、わたしは彼を見つめた。