「殿下は本当に一生懸命、陛下のことを説得してくれたのよ? だけど、受け入れてはもらえなかった。平民出身の妃なんて、過去に例がない。国民や貴族の理解を得られないって言われてしまったらしいの」


 それは陛下の性格を鑑みれば、想像に難くない。王族は感情で動いてはいけない――――その教えを貫いてきた人だから。


「殿下はその間、何枚も何枚も、ペネロペに手紙を書いてくれたの。だけど、それが妹に届くことは無かった。
出産を機にあの子が亡くなって――――その時になってはじめて、殿下はご自身の書いた手紙が隠されていたという事実を知ったの。きっと、ライラと同じか、それ以上に憤られたのだと思うわ」


 そう言ってお母さんは涙を流す。


(お父さん――――)


 その時になって初めて、わたしは王太子様が自分のもう一人の父親なんだって実感した。涙がポロポロと零れ落ちて、悲しみとか怒りとか、よく分からない感情でいっぱいになる。アダルフォが背中をポンポンと撫でてくれて、少しだけ気持ちが楽になった。