もしかしなくてもこの人は国王陛下――――皆が言うことが本当なら、わたしの祖父に当たるのだろう。
 貴族の世界では許しを得るまで口を開いちゃダメって聞いたことがある。今がどんな状況なのか、わたしにはちっともわからない。助けを求めて騎士のおじさんに目配せをすると、コクリと大きく頷かれた。どうやらオッケーって事らしい。


「はい……ライラと申します」


 わたしはそう口にした。緊張で声が震えてしまう。だって、下手を打ったら簡単に首が飛んじゃう世界だって聞くもの。何が正解で何か間違いか分からないんだから、どうやったって緊張するに決まっている。


「あの子に――――クラウスによく似ている」


 そう言って国王様は涙を流した。躊躇いがちにわたしの手を握り、それから哀し気に、愛し気に、わたしのことを見つめている。


(そうか……この人は息子を亡くしたんだものね)


 身内が亡くなった経験の無いわたしには、正しく国王様の哀しみを理解できているかは分からない。だけど、少しだけ――――ほんの少し寄り添うことぐらいは出来ると良いなぁなんてことを思う。
 しばらくの間、国王様はわたしの手を握ったまま肩を震わせていた。