「どう? 美味しい?」


 お母さんが不安気に首を傾げる。城の食事で舌が肥えたんじゃって心配しているみたい。


「美味しいに決まってるじゃない! 世界で一番美味しいよ」


 ボロボロと零れる涙をそのままに、わたしは次々と料理を口に運ぶ。
 わたしを覆っていた重たい鎧がボロボロと剥がれ落ちるみたいだった。剥き出しになった心が、優しく、温かく包み込まれていくみたいだった。


(本当に帰って来たんだなぁ)


 少しずつ、少しずつ、実感が湧いていく。

 お父さんとお母さんは、事情を詳しくは尋ねなかった。手紙すら届いていなかったんだもの。不義理な娘だと思われていたんじゃないか、って少しだけ心配だったけど、そんなことは一切なかった。ただありのままに、わたしのことを受け入れてくれている。


「良かったですね、ライラ様」


 アダルフォがそう言って穏やかに微笑む。こんなに優しい彼の顔は初めて見る気がする。何だか嬉しくなって、頷きながら、わたしはまた涙を流した。