「遠慮しないでよ、アダルフォ。お母さんの料理、すっごく美味しいよ」


 わたしが言えば、彼はほんのりと眉間に皺を寄せた。よく分からないけど、何かしら葛藤しているらしい。長身の彼が立っていると、天井が物凄く低く見える。それが何だか可笑しくって、わたしはアダルフォの手を思い切り引いた。


「っていうか食べなきゃダメ。これ命令だから、ね」


 アダルフォは渋々といった様子でわたしの隣に腰掛ける。そう言えば、彼とこうして食卓を囲むのは初めてのことだ。『従者は姫君とテーブルを共にしない』とか何とか言って、いつも断られていたんだもの。何となくだけど、さっき彼が葛藤していた理由が分かった気がした。


「さ、食べよ?」


 全員で手を合わせて微笑み合う。正直それだけで胸が一杯だった。だけど、いただきますをして、スープを一口含んだその瞬間、胃が勢いよく動き始める。もっともっとって身体が求めているのが分かって、わたしは苦笑を漏らした。