(それにしてもおじさん、声が大きいよ!)


 既に何人かの貴族たちがこちらを振り向いている。『違うんです!』って言いたいけど、それが許される状況とは思えない。
 そうこうしている内に、さっきまでとは比べ物にならない程、騎士達が多くいる場所に着いた。わたしまでピリピリとした緊張感を肌で感じる。


「陛下にお目通りを。事前にお許しは戴いております」


 ある部屋の前まで来ると、騎士のおじさんはそんなことを口にした。待つこと数分。わたし達は宮殿内にある煌びやかな部屋へと案内された。
 そこには男性が一人、黒い帳の掛けられた窓の方を眺めている。ロマンスグレーって言葉がピッタリの髪色に、綺麗な空色の瞳の男性だ。
 男性はこちらを振り向くと、瞳を潤ませながらわたしのことを見つめる。


「君が――――ライラなのかい?」


 男性は目を細めつつ、そう尋ねた。わたしはゴクリと息を呑む。


(……答えて大丈夫なのかな?)